第21話 エンターテインメントは思い出のために(2003.6.15)
テーマパークの魅力はアトラクションだけではなく、テーマ性をもったパーク内の風景やキャストによるさまざまなサービス、あるいはレストランやショップにあることは、このエッセイコーナーでも何度か書いてきました。
これらと並ぶ、大きな楽しみの一つが、たくさんのショーやパレードです。その魅力を語るのは大変難しいことですが、今回は私が今の時点で好きなショーやパレードなどのエンターテインメントをご紹介します。
数あるディズニーテーマパークのエンターテインメントから、私がナンバーワンに推すのは、アメリカはフロリダ州ウォルト・ディズニー・ワールド(以下WDWとします)のEPCOTの夜の花火、「イルミネーションズ」です。少しずつマイナーチェンジが施され、名称も変わっていますが、この稿を書いている現在は「リフレクションズ・オブ・アース」というサブタイトルがついています。
このショーの最大の特徴はそのスケール。EPCOTのワールドショーケースにある巨大な湖全体を使い、中央と周辺から実にさまざまなパターンで花火が上がり、スリリングな展開の音楽と一体となって、瞬きを忘れるほど没入させてくれます。東京ディズニーリゾートでおなじみの花火とは規模も時間も違っており、光と音楽だけできわめてドラマティックなショーに仕立てる展開はたいしたものです。恐らく、「イルミネーションズ」を体験したゲストにとっては、東京ディズニーシー(以下TDSとします)の人気ショー「ディズニーシー・シンフォニー」はかなり物足りなく感じられてしまうのではないでしょうか。
ショーが終わるとこのパークは既に営業を終えており、ゲストたちは余韻を残しながら、これまたすばらしいテーマソング「We Go On」に送られて帰途につきます。まさにリゾートの一日を締めくくるにふさわしい瞬間だと私は思います。
次も夜のエンターテインメントで、同じくWDWのマジックキングダムのパレード「スペクトロマジック」です。東京でもおなじみの「エレクトリカルパレード」に似ていますが、音楽やフローとはすべて独自のもので、私が新婚旅行で観た直後に一度終了してしまい、その後復活して現在も続いています。
パレード内容にはそう大きな違いはありませんが、音楽は「エレクトリカルパレード」でおなじみの電子音ではなくオーケストラによるもので、これが非常に美しく、耳に残る曲調です。バケーションから戻った後もテーマ部分のコーラスが何度も頭の中で再生され、気が付くとこのパレードのためにフロリダまで出掛けたいと考えてしまうという副作用があります。
このパレードに関しては、最初に新婚旅行の思い出と重なっていること、とくに帰りの機内の音楽プログラムにあった、WDWの25周年CDでこの曲を聞き、旅行の終わりを実感した思い出の一曲ということもあって、「スペクトロマジック」は私にとって特別な存在です。
3つめはようやく東京から、TDSの「ミスティック・リズム」を挙げたいと思います。
このショーはご存じの通りロストリバー・デルタにある「ハンガー・ステージ」で毎日4回ほど行われるショーですが、大地や自然の精霊が登場し、ステージ上では派手に火や水が使われます。日本でのこれまでのディズニーによるエンターテインメントは、どうしてもミッキーマウスの人気におんぶしたものになりがちでしたが、このオリジナルのショーの登場によって新しい魅力を付け加えることに成功しています。東京ディズニーリゾートへの拡大期における最大級の成功とさえいえるのが、この「ミスティック・リズム」であるといっても過言ではありません。
4番目にくるのは、WDWのウィルダネス・リゾートにある「フロンティア・ホール」で行われるディナーショー「フープ・ディ・ドゥ・レビュー」です。
ご存じの方も多いでしょうが、このショーはつい先日(といっても、もう2年も前ですが)まで東京ディズニーランド(以下TDLとします)の「ダイヤモンド・ホースシュー」でも行われており、私が本当に好きなのは東京のほうでした。WDWでのショーも同じように楽しいのですが、旅芸人たちの掛け合いやゲストとのやり取りが魅力であるだけに、私の英語力では日本でのショーほどには楽しめないのです。
6人組の旅芸人が歌と踊りとギャグでたっぷりと楽しませてくれるこのショーは、私が「子供向けの遊園地」と思い敬遠していたTDLのへの評価を大きく変えるきっかけでもありました。
東京ではこのレビューの代わりにミッキーやグーフィが登場するショーが行われており、好評のようです。「フープ」が復活する見込みは極めて低いと思いますが、それでもいつの日か、と期待せざるを得ません。これは、同じくダイヤモンド・ホースシューで行われていた昼のショー、「ダイヤモンド・ホースシュー・レビュー」についても同様です。
5番目は、大変ありきたりではありますが「ファンタズミック!」としたいと思います。
このショーはカリフォルニア州アナハイムのディズニーランド(もちろんこちらが本家本元)とWDWのディズニーMGMスタジオの両方で行われています。とくに前者はウェスタンランドのアメリカ河をステージにして行わており、特設ステージの後者よりもはるかに迫力があります。ショーの内容も一部違っており、前者ではコロンビア号の船上でピーターパンとフック船長が一騎打ちを繰り広げるなど、よりスペクタクルです。
では、ディズニーランドの方がずっと良いかというとそうでもありません。後者の特設ステージには、ショーが始まる管理前からゲストが入場し始めるためかなりの待ち時間があります。この待ち時間の雰囲気が私は結構好きなのです。
イカダに乗ったバンドがプレショーでやってくるほか、記念グッズを売り歩くワゴンを押すキャストがあちこちでゲストと掛け合いをし、ゲストの間からウェーブが始まるといよいよこれから始まるショーへの期待が高まります。待ち時間を苦痛にしないこの演出は、最近の東京でも取り入れられ始めていますが、長い歴史とノウハウをもつリゾートならではといえるでしょう。
また、ショーの終盤、ミッキーマウスが山頂に登場した瞬間に会場内で沸き上がるように広がり、そのまま終演後しばらく続く歓声と拍手は、東京のショーとは比べ物になりません。これを体験した後では、日本でのショーがちょっとつまらなく感じられます。MGMスタジオの方が、この歓声がより大規模に感じられるのです。
いかがでしょうか。結果としてフロリダやアナハイムなど海外パークのエンターテインメントばかりを持ち上げるようになってしまいましたが、決してTDLやTDSのそれらがつまらないということではありません。過去のものも含めたショーやパレードのいずれもが楽しく、その時々の大切な思い出です。ただ海外のものは一度か二度しか見ていないだけに、より強く記憶に焼き付くのかもしれません。
人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」のスポンサーでもある日産自動車のCMは、「モノより、思い出」といいます。大切なのはショーやパレードを特等席で見ることではなく、その時々に友人や家族との楽しい思い出を積み重ねること、それがリゾートで過ごすことだと私は思います。ディズニーのテーマパークは、これからも私達にすばらしい思い出をプレゼントしてくれるでしょう。
<2003.6.15>
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