d-essays

第19話 雑誌を見直す(2003.2.15)

私が最初にインターネットへ接続し、WEBサイトを閲覧したのは、まだインターネットなる言葉が新鮮であった、1995年の夏です。
当時はまだ「Yahoo!(もちろん英語版の)」も黎明期。もちろん日本語によるWEBサイトなど極めて少数であり、WEBで情報を集めるなら英語を読むことは必須で、日常の情報収集がWEBで済ませられるのは、まだしばらく先のことだと考えていました。
あれから7年、現在ではちょっとした調べものや街で見かけた気になる広告の確認、ニュースから天気予報に至るまで、情報収集の手段としてのWEBは非常に有用なものになっています。ディズニーに限らず、ありとあらゆる分野について公式・非公式問わず膨大な量の情報を探し出すことができ、WEBさえあれば、ほしい情報がほしいときに、しかもほとんどの場合無料で、入手が可能であるとさえいえます。。
情報の入手容易性や速報性という面からは、WEBの情報は雑誌媒体を遙かに超えたといっても過言ではないでしょう。

かたや、雑誌は相変わらず従来のスピードで動いています。
たとえば講談社の月刊誌「ディズニー・ファン」に、最新のイベントの写真が掲載されるのは早くても1ヶ月後で、それまでは「写真は昨年のものです」というキャプションとともに古いパレードの写真しか見ることができません。
ところが、多くのファンサイトではイベントの開始初日どころか、前日までに行われるプレビューの写真と解説があっという間に掲載されます。速報性という点では比べるべくもありません。
一時、おそらくは月刊化の影響もあったのでしょう、「ディズニー・ファン」の内容が非常に乏しくなったこともあって、私は「もうディズニー雑誌など不要だ」とまで考えていました。
もちろん、雑誌という媒体が不要ということではありません。ただ、ことテーマパークの情報に関しては、速報性と遊びに行く際のTipsこそが重要であり、この点で雑誌はWEB媒体にかなわないと考えたのです。

しかし、WEBの情報を検索し閲覧することがすっかりと日常化した現在、むしろ雑誌という媒体の優位性に気付かされることが少なくありません。
雑誌媒体と個人によるWEBサイトとの最大の違いは、「編集という行為」の有無であると私は思います。そしてこのことが両者の情報としての使い勝手に大きな違いをもたらしています。
個人のWEBサイトは、私のサイトも含めて全体を見渡しての編集はほとんど行われません。むしろ、作ってみて評判が良ければ継ぎ足し、悪ければやめる、といった随時更新こそがWEBの特長であり、編集という情報のマネジメント行為とはなじまないとさえいえます。
このため、WEB上の情報量や情報の密度は、その情報の重要度や価値とは必ずしも一致しません。WEBサイトから自分なりに価値ある情報を見つけ出す作業は、閲覧者が行わねばならず、結果として、WEBサイトの増加も相まって目当ての情報にたどり着く難しさは年々(いや、日々)ますます高まってしまっています。

雑誌記事はほとんどの場合、ある程度の信憑性のある情報であり、発行者の責任のもとで出版されているものです。たとえうわさ話を掲載するとしても、当然その旨が明記されているでしょう。また、読んで意味の通じない文章にお目にかかることは滅多にありません(もちろん、多くのパソコン雑誌のように広告出稿企業の提灯記事が束になり綴じられているような例外もありますが)。編集の手が入った良質な雑誌情報は、むしろ低コストで必要な情報を入手する手段であるといえます。
一方の個人WEBサイトでは、内容の信憑性が保証されないことはもちろん、意図的にねじ曲げられた情報の混入や情報の作り手の勘違いなどは日常茶飯事です。もちろん、何度読んでも意味の通じない奇怪な文章が氾濫しています。無料で閲覧できるとはいえ、多くの時間を無駄にすることにもなりかねません。

もともと雑誌は、ストック型の情報といえる書籍に対して速報性を重視したフロー型の情報であったといえます。その雑誌がストック型の情報に思えるほど、WEBの情報量とその流通速度は他のすべての媒体を上回って増大しています。
フロー型情報の主な担い手であることから離れた雑誌は、今後ストック型情報への入り口として役割を果たしていけるのではないかと私は思います。書籍というストック情報として読み継がれてきた「物語」なしには、ディズニーの素晴らしい作品群は生まれていなかったこと、原点としての物語を失ったディズニーの近年の作品が明らかな質の低下を見せていることを思い起こしていただきたいのです。
WEBの情報は確かに膨大で、これだけで日常困ることはないかもしれません。しかし、豊かな物語文化やそこから派生するさまざまな情報の蓄積が、雑誌や書籍という形ですぐ手に届く場所にあります。使い捨てられる情報にとどまらず、時にはストックの宝の山にふれてみては、いかがでしょうか。
<2003.2.15>

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