第6話 「ダイナソー」ってつまらない?(2001.3.28)
2001年の正月映画、ディズニーは「ダイナソー」を公開しました。
CGの恐竜と実写の風景を見事に融合させた迫力に満ちた映像は、あれほどの衝撃であった「ジュラシック・パーク」を古くさく感じさせるほどのものでした。もともと82分と短めの作品でもあり、まさに映像に見とれていたらあっという間に終わってしまった、というのが私の印象でした。
さて、この作品は「成功」したのでしょうか?
アメリカでは興行収入が2億ドルを超え、「タイタニック」や「スター・ウォーズ」には遠く及ばないものの歴代ヒット作に名を連ね、日本でも2001年正月映画では興行成績がトップであったとされています。多くの観客を楽しませることが映画の成功とすれば、「ダイナソー」は成功作であったといえるでしょう。
しかし、私は2つの観点から、これは失敗作であったと考えます。
第一に、この作品は、映像としての見せ場がふんだんにある一方で、ストーリーは単純明快に過ぎ、ターゲットが子供達であるにしても、深みに欠けることを否定できません。
作品中最大の悪役、恐竜たちの群を率いる冷酷なリーダーのクローンは、緑の豊かな伝説の大地を目指して荒野を移動します。群を一刻も早く豊かな土地へ導くため、彼は弱いもの、年老いたものを容赦なく見捨てます。
一方、主役のアラダーは、このやり方に反発を覚え、年老いた恐竜たちを支えながら最後には群を豊かな土地へと導くことに成功します。クローンは伝説の地を目前に、愚かにも急峻な岩場を駆け登ろうとして失敗、肉食恐竜のカナタウルスによって殺されてしまいます。このストーリーから、観客は弱いものを支えて共生することの価値を感じることでしょう。それ自体は間違っていません。
しかし、弱いものを見捨てるクローンは、リーダーとして本当に誤っていたのでしょうか? 難しい選択です。群の後からは、はぐれた恐竜を狙う肉食竜が忍び寄り、メンバー達の体力は日に日に衰えていく、こんな極限状況で、群全体のスピードをもっとも遅い恐竜に揃えることが本当に正しいのか。クローンを最初から冷酷なキャラクターとして描くのではなく、彼の苦悩を少しでも織り込むことができなかったものかと残念です。
現実に難しい選択をしながら、それでも一人でも多くの仲間の幸福を実現しようとする行動の尊さを、より強く訴えることができたのではないでしょうか。
おまけに、彼は妹からも見放され、身勝手な行動の末に死んでいきます。悪役を単純化しすぎるあまり、非常に薄っぺらな勧善懲悪の物語になってしまったといわざるを得ません。
第二には、ディズニーの作品としての広がりの狭さです。キャラクターの使い勝手といっても良いかもしれません。
たとえば、同じくCG作品である「トイ・ストーリー」や「バグズ・ライフ」からは、ウッディやバズ、あるいはフリックといったキャラクターが誕生し、グッズやアトラクションで活躍しています。つまり、映画だけでなく、テーマパーク事業も含めて作品としての業績を上げているわけです。ディズニー作品は映画だけではなく、グッズやテーマパークを含めたエンターテインメントととらえる必要があります。
「ダイナソー」は、この点では成功しているとはいえません。まさか、テーマパーク内を恐竜が練り歩くわけにも行きませんし、グッズといっても展開には限度があるでしょう。
これら二つの要因をあわせ、「ダイナソー」は、映画として完結すべき素材(テーマパーク事業への展開性の低い素材)であるにもかかわらず、映画そのものの完成度が低い状態にとどまった故に、失敗作であったと考えるのです。
薄っぺらな勧善懲悪は、アトラクションやグッズに展開する上では、むしろ好条件です。
ディズニーの初期の代表作「白雪姫」「眠れる森の美女」などは、実は勧善懲悪の単純な物語です。映画では、なぜ女王が自分よりも美しい女性の存在を認めたくないのか、なぜマレフィセントがそこまで他人の幸福をねたむのか、は全く語られません。クローンの苦悩を描かないのと同様です。これによって主たる観客である子供達にとっては、簡単に一方の味方に付くことができ、思い入れを深めることができます。
ただ、ディズニーも単純な善悪の対立構図にとどまっているわけではありません。
「ヘラクレス」のメガラは、理由は定かでないものの悪役ハデスの手先となって登場し、ヘラクレスを騙し陥れることに苦悩します。「ノートルダムの鐘」の悪役フロローはこれ以上ないほどの悪党として描かれますが、エスメラルダの美しさや奔放さを認めてしまう己の本心を呪うかのようなシーンが印象的です(ちょっと大人向けですが...)。
現代においては、弁護の余地なく悪い人物など受け入れられにくいのかもしれません。それだけに、クローンの描写には不満が残るのです。
映画への感想は人それぞれです。私とは違った感想を抱いている人も多いでしょう。
「ダイナソー」が好きで好きでたまらない、という方にはちょっと嫌な内容であったかもしれませんが、こんなことを考えながら観ると、ディスニー映画の楽しみ方もまた、増えるのではないでしょうか。
<2001.3.28>
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